有馬温泉
温泉郷に関する読み物 — 名湯・地域の温泉文化
有馬温泉
火山がないのになぜ熱い?地球の底とつながる不思議な古湯
兵庫県神戸市にある有馬温泉は、日本の歴史に最も古くから登場する格式高い温泉で、「日本三古湯」や「日本三名泉」に数えられています。江戸時代の温泉番付でも、西日本の最高位である「西の大関」に君臨し続けてきました。
歴史のピンチを「地震」とともに乗り越えてきた街
有馬温泉の始まりは神話の時代に遡りますが、その後の復興の歴史は、実は「地震」や「大災害」と深く結びついています。
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行基(ぎょうき)さんによる復興(奈良時代):大きなお震災のあと、お坊さんの行基が「有馬の湯を復興させなさい」というお告げを受け、荒れていた温泉地を蘇らせて温泉寺を建てました。
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仁西(にんさい)さんによる中興(鎌倉時代):大洪水で再び荒れてしまった有馬を、吉野のお坊さんである仁西がリニューアル。現在も有馬の旅館の名前に残る「〜坊」という12の宿坊を作り、観光地として整備しました。
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豊臣秀吉の愛と大復活(安土桃山時代):秀吉は有馬を生涯で9回も訪れるほど愛し、復興を支援しました。特に1596年の「慶長伏見大地震」で有馬が壊滅的な被害を受けた際、秀吉はすぐに街の建て替えを命じ、自分の別荘「湯山御殿」を建てました。
地質学的なデータによると、この大地震の直後は、地下の断層が動いたことで温泉の温度が急上昇し、しばらく入れないほどの「熱湯」になったそうです。その後も周辺で地震が起きるたびに、お湯の温度が10度も上がったり、湧き出る量が2倍になったりという記録があり、有馬の温泉は地球の活動とリアルタイムで連動していることが分かっています。
火山がないのに熱いお湯が湧く秘密
実は、有馬温泉のまわりには熱源となる火山が一つもありません。火山がないのにどうして熱い温泉が湧くのでしょうか。 その秘密は、海の底から沈み込んでくる「地球のプレート」にあります。有馬の地下深くには「フィリピン海プレート」という、地球の中でも比較的若くて熱いプレートが沈み込んでいます。このプレートが地下約60kmという場所まで進んだとき、熱によって内部の水分がギュッと絞り出されます。
この絞り出された水分が、地下の深い断層(有馬高槻構造線)を通って、一気に地表まで上がってくるのです。つまり有馬のお湯は、およそ600万年前にプレートによって地下深くへと閉じ込められた「太古の海水」そのもの。火山を通らずに地球の奥深くから直接湧き出てくる、世界でも珍しい仕組みの温泉です。
2つの名湯「金泉」と「銀泉」
有馬温泉のお湯は、その見た目と成分から2種類に分かれています。
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金泉(きんせん):地球の底から湧き出たプレートの水。海水よりもはるかに濃い塩分と、たっぷりの鉄分を含んでいます。湧き出た瞬間は無色透明ですが、空気に触れて鉄分が酸化すると、独特の赤茶色(金茶色)に変わります。塩のベールがお肌を包むため、体が芯からポカポカ温まります。
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銀泉(ぎんせん):金泉が上がってくる途中で分かれた炭酸ガスやラドンガスが、浅い地下水と混ざり合ってできた温泉。サラサラとしていて爽快感があります。
有馬全体の湧出量はそれほど多くなく、貴重な資源です。最近では、周辺での開発によって成分が薄くならないよう、大切に守っていく取り組みが進められています。
マニアックな豆知識(成分・源泉データ)
金泉の塩分 — 「海水より濃い」と言われるが、分析表によって数値は異なる。金の湯の掲示分析では塩化物イオン約21,000mg/kg、成分総計約36g/kg(海水の塩分濃度3.2〜3.8%と同程度〜やや上)。一方、上大坊の天神源泉は成分総計45〜62g/kg級と、施設ごとに濃度差が極端に大きい。
金泉の鉄分 — 湧出直後は無色透明。空気接触でFe²⁺が酸化し赤茶色に。上大坊の天神源泉は鉄分121mg/kg級と、通常の金泉(数十mg/kg)を大きく上回る。
主要源泉(金泉系) — 有明1・2号泉(90.1℃)、天神源泉(98.2℃)、御所源泉(83.5℃)、極楽源泉(94.3℃)、妬源泉(93.8℃)。いずれも含鉄-ナトリウム-塩化物強塩高温泉。
銀泉の正体 — 炭酸泉(HCO₃⁻)とラドン泉。金泉が上昇する途中で分離したガスが浅部地下水と混合して形成。サラサラした体感はCO₂の微細泡による。
非火山性の意味 — 有馬の周辺に活火山はない。熱源はフィリピン海プレートの沈み込み(約60km)による深部熱。湧出量全体は約900L/分程度と少なく、強塩泉はその1割程度とされる。
地震との連動 — 慶長伏見大地震(1596)後に泉温が急上昇し「熱湯」になった記録がある。有馬高槻構造線上の断層活動と湯温・湧量が連動する例が歴史上複数残る。
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