九州温泉道
入浴に関する読み物 — マナー・作法・湯めぐりの心得
九州全土を舞台に繰り広げられる湯の修験道「九州温泉道」とは
九州は、地球の脈動がダイレクトに伝わる世界有数の温泉天国です。その九州7県(大分、熊本、宮崎、鹿児島、佐賀、長崎、福岡)に点在する名湯・秘湯・名物共同浴場を巡り、自らの足と肌で湯の真理を極めていく壮大な修行の旅、それが「九州温泉道(きゅうしゅうおんせんどう)」です。
別府八湯温泉道から発展したこの温泉道には、温泉識者や選考委員会によって厳選された「九州を代表する100湯以上の名湯(対象施設)」が参画しています。その中から「88」の湯を巡り、専用のスタンプ帳「スパポート」または公式アプリに入湯記念印を重ねていくことで、最高峰の称号である「九州温泉道名人」を目指します。
一つの街に留まらず、阿蘇の雄大な山並みを越え、雲仙の地獄を巡り、錦江湾を望む南端まで旅を繋いでいくスケールの大きさが最大の魅力です。道中では、各土地の郷土料理に舌鼓を打ち、方言飛び交う共同浴場で地元の人々と湯船を共にしながら、九州の豊かな風土と歴史、人情に深く触れることができます。
旅の舞台となる九州7県の温泉地帯
九州の温泉は、火山活動や地質構造によって県ごとに全く異なる表情を見せてくれます。
大分(おんせん県おおいた)
別府八湯や由布院をはじめ、日本一の湧出量と源泉数を誇る温泉王国です。長湯温泉の強力な炭酸泉や、くじゅう連山に抱かれた極上の濁り湯・秘湯群など、バリエーションの豊富さは世界屈指です。
熊本(火の国の名湯群)
阿蘇山を中心に広がる多様な温泉地が魅力です。川沿いに風情ある旅籠が立ち並ぶ黒川温泉、歴史ある山鹿・平山温泉のトロトロとしたぬる湯、古くから湯治場として栄えた人吉温泉など、深い情緒に浸ることができます。
鹿児島(火山と海が生み出す湯の国)
桜島や霧島連山を抱き、ダイナミックな湯量が自慢のエリアです。湯煙舞う霧島温泉郷の硫黄泉、世界的に珍しい指宿温泉の砂むし風呂、さらには海岸から直接湧き出す露天風呂など、野趣あふれる湯巡りが楽しめます。
宮崎(神話と静寂の隠れ湯)
霧島山系に抱かれた加久藤温泉や京町温泉、南国の風が心地よい青島温泉など、豊かな自然と神話の歴史に包まれた温泉地が点在します。肌になじむやさしい泉質が多く、心身を静かに癒やす湯治に最適です。
佐賀(美肌と歴史の歴史泉)
日本三大美肌の湯として名高い嬉野温泉のトロトロとした重曹泉や、開湯1300年の歴史を持ち、朱塗りの楼門がシンボルの武雄温泉など、古い歴史と高い美肌効果を誇る名湯が揃っています。
長崎(異国情緒と地熱の湯)
キリシタンの歴史と激しい地熱活動が交差する雲仙温泉は、強い酸性と硫黄臭が漂う白濁の湯が特徴です。一方で、海に面した小浜温泉は湧出温度100度を超える高温泉で、夕日を眺めながらの入浴が格別です。
福岡(都市に寄り添う癒やしの湯)
万葉の時代から続く筑紫野市の二日市温泉や、筑後川の恵みを受ける原鶴温泉、さらには珍しい赤湯が湧く遠賀川沿いの温泉など、都市の賑わいからほど近い場所で味わい深い名湯に出会えます。
湯船で出会う、九州が誇る「極上泉質」
九州温泉道に参画する施設は、温泉の質や特徴が極めて際立っている場所ばかりです。
天与の保湿・つるつる感(炭酸水素塩泉・アルカリ性単純温泉)
嬉野(佐賀)や平山・山鹿(熊本)などに代表されるお湯です。触れた瞬間に「ローションのよう」と形容されるほどの強いヌルツル感があり、肌の不要な角質や皮脂をやさしく落としてしっとりとした美肌へ導きます。
弾ける泡と圧倒的な温まり(二酸化炭素泉・塩化物泉)
長湯温泉(大分)に代表される炭酸泉は、全身に細かな気泡が付着し、血管を拡張させてぬる湯でも体を芯から温めます。また、沿岸部に多い塩化物泉は「熱の湯」と呼ばれ、皮膚に塩分の膜を作るため湯冷めしにくいのが特徴です。
火山のエネルギーを宿す(酸性泉・硫黄泉)
雲仙(長崎)や霧島(鹿児島)、明礬(大分)などの火山地帯に湧くお湯です。白濁した湯と卵の腐敗臭のような独特の香りが五感を刺激し、強い殺菌力で皮膚病を癒やすとともに、全身の細胞をシャキッと覚醒させてくれます。
鉄分と地球のロマン(含鉄泉・酸性硫酸塩泉)
別府の鉄輪や赤川温泉(大分)などで出会える、褐色や緑白濁に色づいた個性的で力強いお湯です。ビロードのような肌触りと独特の金網臭が漂い、体を力強くリフレッシュしてくれます。
スパポートに刻まれていくスタンプの一つひとつは、あなたが九州の大地を走り抜き、極上の湯と出会ってきた「修行の軌跡」そのものです。九州温泉道は、湯巡りを通して九州という土地の深さに魅了されていく、生涯にわたる冒険の旅といえます。
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