純温泉の定義
入浴に関する読み物 — マナー・作法・湯めぐりの心得
「湯使い」と純温泉の5つの分類基準
温泉の価値を見極めるために、純温泉協会は「湯使い(ゆつかい)」という言葉を重視しています。湯使いとは、浴槽に注がれる温泉に対して、加水(水を足す)、加温(温める)、循環ろ過装置の使用、そして塩素や入浴剤などの添加を行っているかどうかの仕様を意味します。
一般的に人気のある「源泉かけ流し」という言葉には、実は法律上の明確な定義がありません。そのため、お湯を薄める加水を行っていたり、塩素消毒を施していたりしても、お湯を再利用せずに浴槽からあふれさせていれば「源泉かけ流し」と表示できてしまうのが現状です。
この曖昧さを解消し、食品における「無添加」や「オーガニック」のように消費者が安心して本物の温泉を選べる基準として、純温泉協会は以下の通り「純温泉」の定義を厳格に定めています。
純温泉の定義
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循環ろ過装置を設置していないこと
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浴用の温泉水に塩素系薬剤などを添加して消毒していないこと
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浴用の温泉水に入浴剤などを添加していないこと
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適正な清掃および衛生管理を行っていること
この定義のもと、お湯の温度調節などの仕方に合わせて、純温泉は以下の5つのタイプに細かく分類されています。これらは温泉の優劣を示すランクではなく、お湯の性質に合わせた管理方法の違いを表しています。
| 純温泉のタイプ | 湯使いの仕様・特徴 |
|---|---|
| 純温泉A | 完全放流式(かけ流し)・加水なし・加温なし・循環ろ過なし・消毒なし・入浴剤なし |
| 純温泉B | 完全放流式・加水あり(源泉が高温で、お湯の個性を壊さない程度に加水)・加温なし・循環ろ過なし・消毒なし・入浴剤なし |
| 純温泉C | 完全放流式・加水なし・加温あり(源泉が低温のため、適温に温めている)・循環ろ過なし・消毒なし・入浴剤なし |
| 純温泉D | 完全放流式・噴気造成泉(火山ガスをお水に当てて作った温泉をそのまま使用)・循環ろ過なし・消毒なし・入浴剤なし |
| 純温泉E | 溜湯方式(貸切風呂などで、1組の利用ごとに温泉をすべて入れ替える)・循環ろ過なし・消毒なし・入浴剤なし |
塩素消毒と温泉の劣化における科学的仕組み
なぜ、自然のままの温泉は減少しているのでしょうか。その背景には、温泉の衛生管理に関する厳しい法律や科学的な課題があります。
日本の公衆浴場法や自治体の条例では、お風呂の中での感染症を防ぐために、浴槽水の塩素濃度を「0.4mg/L以上」に保つことなどが強く指導されています。特に、お湯を浴槽とろ過器の間で循環させて再利用する「循環ろ過式」の温泉では、配管やお湯の中に「バイオフィルム」と呼ばれる細菌の膜(ぬめり)が発生しやすくなります。このバイオフィルムは、重い肺炎を引き起こす「レジオネラ属菌」の温床となるため、強力な塩素系薬剤による定期的な洗浄と毎日の消毒が欠かせません。
しかし、ここで温泉の品質との間に大きな矛盾が生じます。消毒に使われる塩素系薬剤は、非常に強い「酸化剤」です。塩素を温泉に加えると、その強い酸化力によって雑菌を退治できますが、同時に温泉に含まれる天然の成分やお湯自体も酸化させてしまいます。これにより、温泉本来のまろやかな肌触りや、特有の香り、美肌効果などが損なわれ、お湯が「劣化(酸化)」してしまうのです。
こうした衛生面での安全確保とお湯の品質維持を両立させるために、科学的なアプローチが重要になります。レジオネラ属菌の性質として、酸性度が非常に高い環境(pH 5.0以下)や、塩分濃度(ナトリウム濃度)が極めて高いお湯の中では、細菌が生息しにくいことが分かっています。つまり、温泉が持つ本来の性質(泉質)や、毎日お湯を完全に抜き取って浴槽を清掃する徹底した衛生管理があれば、塩素消毒に頼らなくても十分に安全で清潔なお風呂を提供することが可能です。
純温泉協会は、このような温泉の個性を殺さずに安全を保つ仕組みを広め、国や自治体に対して、一定の条件を満たした温泉施設には塩素消毒を免除するような柔軟な基準を設けるよう働きかけています。
認定温泉の多様な分類と情報発信
純温泉協会に会員登録した施設は、協会による審査を経て「純温泉」としての認定を受けます。これらの温泉を一般の利用者が自分の好みや目的に合わせて選べるよう、ウェブサイト上では多角的なカテゴリーに分類して紹介しています。
温泉の成分や建物の雰囲気、利用シーンに合わせて細かく整理されているため、中学生から高齢者まで、誰でも自分に合った温泉を直感的に探すことができます。
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