文化BUNKA

温泉入浴と腸活——腸内細菌叢の最新研究

文化に関する読み物 — 地質・制度・業界・トレンド

2026年9月2日読了 5分
#トレンド
文化BUNKA

温泉入浴と腸活——腸内細菌叢の最新研究

サウナ・温活ブームで注目される「温活」に、新たな科学的裏づけが加わりつつあります。温泉に入ると 腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう) が変化する——この発見は、泉質ごとの効能の違いを、分子レベルで説明する手がかりになるかもしれません。

別府・九州大学の大規模研究(136人・5泉質)

九州大学と別府市が共同で実施した研究(Scientific Reports, 2024年)は、健康な成人136人に別府温泉の5泉質(単純温泉塩化物泉炭酸水素塩泉硫黄泉硫酸塩泉)のいずれかへ、7日間連続・1日20分以上入浴してもらい、入浴前後の便を解析しました。

主な結果は次のとおりです。

泉質腸内細菌の変化(概要)
炭酸水素塩泉ビフィズス菌(Bifidobacterium bifidum)が最も大きく増加
単純温泉複数の菌種で有意な変化
硫黄泉Ruminococcus属などが増加
塩化物泉泉質固有の変化が確認された

「泉質によって腸内環境への影響が異なる」ことが、初めて大規模データで示されました。伝統的に語られてきた「泉質ごとの効能」と、腸内細菌の変化が対応しうる可能性が示唆されています。

明礬温泉の追試——短鎖脂肪酸が増える

別府の明礬温泉(硫黄を多く含む温泉)を対象にしたパイロット研究(Environmental Health and Preventive Medicine, 2025年)では、健康な成人男性16人が2週間で4回入浴した結果、以下が報告されました。

  • 善玉菌とされる Bifidobacterium、Blautia、Anaerostipes が増加
  • 酢酸・プロピオン酸・酪酸などの 短鎖脂肪酸(SCFA) が増加

短鎖脂肪酸は腸のバリア機能や免疫調整に関わる代謝産物です。胃腸の不調に良い泉質(飲用)で紹介する飲泉の効能とは別の経路で、入浴が腸の健康に関与しうることを示す研究です。

「腸活×温泉」——湯めぐりの新しい楽しみ方

研究段階ではありますが、実践のヒントとして次のような組み合わせが考えられます。

  • 炭酸水素塩泉 を中心に、7日間の連続入浴(湯治スタイル)
  • 入浴後のヨーグルトなど発酵食品で、ビフィズス菌の増加を補助する(研究では食生活は通常通りが条件でしたが、相乗効果の可能性は今後の課題です)
  • 別府温泉のように泉質の異なる温泉地を巡り、泉質ごとの体験を比べる

わかっていること・わかっていないこと

わかってきたこと

  • 健康な人でも、1週間の温泉入浴で腸内細菌の構成が変わる
  • 泉質によって増えやすい菌が異なる
  • 硫黄温泉では短鎖脂肪酸の増加も観察された

まだわかっていないこと

  • 変化がどれくらい持続するか
  • 疾患を持つ人への効果
  • 飲泉との併用効果
  • 加水・加温で泉質が変わった場合の影響

別府の温泉施設を探す

キーワード:別府
もっと見る

関連の読み物

この記事からリンクされているノート、またはこの記事へリンクしているノート